「機能的非識字」とは?見過ごされてきた「読めるけどわからない」

わかるくん
わかるくん
May 18, 2025

こんにちは。

オンライン授業のクエスタオンライン、
福井県坂井市春江町の学習塾クエスタ公式アシスタントの「わかるくん」です。

当塾では開業当初から「読解力」に着目し、
無学年式の専門講座を開講していますが、
先日、アベマTVに新井紀子先生がご出演され、
読解力とRSTに注目が集まっています。

アベプラ公式チャンネルより↓↓↓

ということで、今日のテーマは「機能的非識字」について。

早速内容の方入っていきましょう。

---

「読書は好きですか?」「新聞や説明書を読むのに苦労した経験はありませんか?」

多くの方が、文字を読むこと自体はできるでしょう。しかし、「文字は追えるのに、書かれている内容が頭に入ってこない」「読んだはずなのに、何が言いたいのかわからない」…そんな経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。

実はこれ、「機能的非識字(きのうてきひしきじ)」と呼ばれる状態かもしれません。

この記事では、一見わかりにくい「機能的非識字」について、その意味や原因、私たちの生活に潜む影響、そして改善のためにできることを、前半では専門知識のない親御さんや学生さんにもわかりやすく、後半ではより専門的な視点も交えながら、詳しく解説していきます。

この記事を読んでわかること

  • 「機能的非識字」の具体的な意味と、「非識字」や「ディスレクシア」との違い
  • 機能的非識字が起こるさまざまな原因
  • 日常生活や学習、仕事における機能的非識字の影響
  • 機能的非識字のサインとなる可能性のある行動や状況
  • 家庭や個人で取り組める読解力向上のためのヒント
  • 機能的非識字に関する学術的な背景や国内外の現状
  • 機能的非識字への専門的な対策や支援方法

「前半」はわかりやすく、「後半」では専門的な内容も含めてまとめました。

「自分には関係ない」と思っている方も、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
この問題は、子どもから大人まで、誰にでも関わる可能性のある、現代社会の隠れた課題なのです。

前半:

1. 「機能的非識字」とは

「機能的非識字」と聞いても、あまり馴染みのない言葉かもしれませんね。まずは、この言葉の意味を、身近な例を交えながら見ていきましょう。

「読める」と「わかる」は違う?

想像してみてください。

  • スマートフォンの新しいアプリ、説明を読んでも使い方がいまいちピンとこない。
  • 家電の取扱説明書、文字は読めるのに、結局どう操作すれば良いのかわからない。
  • ニュース記事を読んだけど、何が問題で、どういう影響があるのかよく理解できなかった。
  • 学校の教科書、一通り読んだけれど、先生の質問にうまく答えられない。

これらの経験は、もしかしたら機能的非識字のサインかもしれません。機能的非識字とは、文字を読むことはできるけれども、書かれている文章の意味を十分に理解したり、その情報を活用したりすることが難しい状態を指します。[1][2]

例えば、料理のレシピを見て、材料の名前や手順の文字は読めても、それぞれの工程が何を意味し、どうすれば美味しい料理が作れるのかを正確に把握できない状態を想像すると分かりやすいかもしれません。[2]

「非識字」や「ディスレクシア」とは違うの?

ここで、「非識字」や「ディスレクシア」といった言葉との違いを整理しておきましょう。

  • 非識字(ひしきじ): 簡単な文章の読み書きや計算ができない状態を指します。つまり、文字そのものを読むことが難しい状態です。[1][3]
  • ディスレクシア: 学習障害の一つで、知的な発達に遅れはないものの、文字の読み書きに限定して著しい困難が生じる状態です。[1] 原因が脳機能の発達に関連している点で、機能的非識字とは異なります。[1]
  • 機能的非識字: 上述の通り、文字は読めるものの、文章の内容理解や情報活用が難しい状態です。[1]

つまり、機能的非識字の人は、一見すると文字が読めているため、周囲からは困難が見過ごされやすく、本人でさえ自覚していないケースも少なくありません。[3][4]

「自分は大丈夫」と思っていませんか?

「自分は本も読めるし、テストの点も悪くないから大丈夫」と思っている人もいるかもしれません。しかし、機能的非識字は、学力や知能の高さとは必ずしも直結しません。普段の生活で少しでも「読みにくさ」「分かりにくさ」を感じているなら、それは他人事ではないかもしれません。この問題は、私たちの日常生活の質や、社会で生きていく力に深く関わっているのです。

2. どうして「機能的非識字」になるの?

では、なぜ文字が読めるのに内容が理解できない「機能的非識字」の状態になってしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

子どもたちの周りに潜む原因

  • 読書習慣の不足・活字離れ:
    • スマートフォンや動画コンテンツの普及により、じっくりと文章を読む機会が減っていることが指摘されています。[5][6]
    • 本を読む習慣がないと、長い文章を読み解いたり、複雑な情報を処理したりする力が育ちにくいと言われています。[5]
  • 語彙力の不足:
    • 知っている言葉の数が少ないと、文章に出てくる単語の意味がわからず、結果として文章全体の理解が難しくなります。
    • 会話の機会が減ることも、新しい言葉を獲得したり、言葉の表現力を磨いたりする機会の減少につながる可能性があります。[5]
  • 文章構造の理解不足:
    • 文章には、「主語と述語」「原因と結果」「対比」など、情報を伝えるための構造があります。これらを意識せずに読んでいると、内容を正確に捉えることが難しくなります。
  • 集中力の低下:
    • 短い動画やSNSの投稿など、次々と新しい情報が流れてくる環境に慣れると、一つの文章に集中して向き合うことが苦手になることがあります。
  • 受動的な情報摂取の習慣化:
    • 映像や音声コンテンツは、情報を受け取る側が能動的に頭を働かせなくても、ある程度内容が理解できるように作られているものが多くあります。こうした受動的な情報摂取に偏ると、自ら文章の意味を読み解こうとする力が弱まる可能性があります。
  • 「なんとなく読み」の癖:
    • 丁寧に言葉の意味や文のつながりを考えずに、雰囲気や知っている単語だけで「なんとなく」読んでしまう癖がついていると、正確な理解には至りません。[7]

大人にも関わる原因

大人になってから機能的非識字の困難に直面する、あるいは自覚するケースもあります。

  • 長年の読書習慣の欠如:
    • 学生時代以降、まとまった文章を読む機会が極端に減ってしまった。
  • 仕事で触れる文章の専門化:
    • 特定の分野の専門用語や複雑な言い回しが多い文章に触れる機会が増え、一般的な読解力だけでは対応しきれなくなる。
  • 情報過多社会による影響:
    • 日々大量の情報に触れる中で、一つ一つの情報をじっくり吟味する時間的・精神的余裕がなくなり、表面的な理解にとどまりやすくなる。
  • デジタル機器への依存:
    • 要約された情報や短いテキストに慣れ親しむことで、長文読解への耐性が低下する。

これらの原因は、どれか一つだけが影響しているというよりは、複数組み合わさって機能的非識字の状態を引き起こしていることが多いと考えられます。大切なのは、自分や周りの人がどのような状況に置かれているかを客観的に見つめ、必要であれば対策を考えることです。

3. 「機能的非識字」だと、どんなことに困るの?

文字は読めるのに内容が理解できない「機能的非識字」の状態は、日常生活のさまざまな場面で困りごとや不利益につながる可能性があります。具体的にどのような影響があるのか見ていきましょう。

日常生活での困りごと

  • 手続きや契約が難しい:
    • 役所の手続き書類や保険の契約書、スマートフォンの契約内容など、重要な書類の内容を正確に理解できず、不利益を被ってしまう可能性があります。[8][9]
    • 例えば、薬の説明書を正しく理解できずに誤った服用をしてしまう危険性も考えられます。[2]
  • 情報に振り回されやすい:
    • ニュース記事や公的な発表の内容を正しく解釈できず、誤った情報やデマに惑わされたり、詐欺の被害に遭いやすくなったりするリスクがあります。[8]
  • 日常生活での危険察知能力の低下:
    • 危険を知らせる掲示や避難情報などを読んでも、その深刻さや具体的な行動を理解できないかもしれません。[1]
  • 買い物がスムーズにいかない:
    • 商品の成分表示や品質表示、注意書きなどを理解できず、適切な商品を選べなかったり、思わぬトラブルにつながったりすることがあります。

学習面での困りごと(特に学生さん)

  • 教科書の内容が理解できない:
    • 授業で教科書を読んでも、何が重要なのか、どのような意味なのかが掴めず、学習内容が身につきにくいことがあります。[10][11] これは、特定の科目が苦手だと感じる大きな原因の一つになり得ます。[11]
  • テストの点数が伸びない:
    • 問題文の意味を正確に読み取れず、何を問われているのかがわからないため、せっかく知識があっても正解にたどり着けないことがあります。特に文章題や長文読解問題で苦労しやすくなります。
  • 学習意欲の低下:
    • 「読んでもわからない」という経験が続くと、勉強に対する苦手意識や劣等感が生まれ、学習意欲そのものが低下してしまうこともあります。

仕事面での困りごと(特に社会人の方)

  • マニュアルや指示が理解できない:
    • 仕事の手順書や業務マニュアル、上司からの指示などを正しく理解できず、ミスをしたり、業務効率が上がらなかったりすることがあります。[2]
  • 報告書やメール作成が苦手:
    • 情報を整理し、相手に分かりやすく文章で伝えることが難しく、コミュニケーションに支障が出ることがあります。[2]
  • 新しい知識や技術の習得が困難:
    • 変化の速い現代社会において、新しい情報や技術を学ぶために資料を読む機会は多くありますが、読解力が低いと、その習得に時間がかかったり、諦めてしまったりする可能性があります。[2]
  • キャリアアップの阻害:
    • 昇進やより専門的な業務に就くためには、高度な情報処理能力や文章理解力が求められることが多く、機能的非識字がキャリア形成の妨げになることも考えられます。[2]

社会生活全体への影響

  • 社会や政治への参加が困難になる:
    • 新聞やニュース、公的な情報を理解することが難しいと、社会で起きている問題や政治の動向を把握し、主体的に社会参加することが難しくなる可能性があります。[1][8]
  • 情報格差・経済格差の拡大:
    • 必要な情報を得て活用する能力の差が、得られる機会や経済的な豊かさの差につながってしまうことも懸念されます。
  • 自己肯定感の低下:
    • 「自分は他の人よりも理解が遅いのかもしれない」「何度読んでもわからないのは自分の能力が低いからだ」などと感じてしまい、自信を失ったり、精神的なストレスを抱えたりすることもあります。[2]

このように、機能的非識字は、個人の生活の質だけでなく、社会全体のあり方にも影響を及ぼす可能性のある、見過ごせない問題なのです。

4. もしかして…?機能的非識字のサイン

「うちの子、もしかしたら…」「自分も当てはまるかもしれない…」と感じた方もいるかもしれません。ここでは、機能的非識字の可能性がある場合に現れやすいサインを、子ども向けと大人向けに分けていくつか挙げてみます。

ただし、これらはあくまで目安であり、いくつかのサインが当てはまるからといって、必ずしも機能的非識字であると断定できるわけではありません。気になる場合は、専門家(学校の先生、教育相談機関、医師など)に相談することが大切です。

子ども向けのサイン(例)

  • 音読が苦手、または音読はできるが内容を理解していない:
    • 読むのがつっかえたり、不自然な区切りで読んだりする。
    • スラスラ読んでいるように見えても、読んだ後に内容について質問すると答えられない、または的外れな答えをする。
  • 文章題(算数など)を解くのが極端に苦手:
    • 計算はできるのに、問題文が何を求めているのか理解できない。
    • 図や絵で示すと理解できるが、文章だけだと混乱する。
  • 教科書や物語を読んでも、あらすじや登場人物の気持ちを説明できない:
    • 「面白かった」「つまらなかった」といった感想は言えても、具体的な内容や登場人物の心情の変化などを言葉で表現するのが難しい。
  • 先生や親からの指示(特に少し複雑なもの)を正確に理解できない:
    • 一度で聞き取れなかったり、途中で何をすればいいのかわからなくなったりする。
  • 新しいゲームのルールや、工作の説明書などを理解するのに時間がかかる。
  • 質問に対して、的確に答えられないことが多い:
    • 質問の意図を汲み取れず、聞かれたことと違う内容を話してしまう。
  • 長文を読むのを嫌がる、集中力が続かない。

大人向けのサイン(例)

  • 新聞やニュース記事、専門的な文章を読むのが苦痛で避けてしまう:
    • 文字を追うだけで疲れてしまい、内容が頭に入ってこない。
  • 契約書や規約、説明書などを読んでも、重要なポイントやリスクが理解できないことが多い。[8]
  • 複数の情報源から得た情報を比較検討したり、要点をまとめたりするのが苦手。
  • 会議や打ち合わせで、資料を読んでも議論のポイントが掴めないことがある。
  • メールや報告書など、文章で何かを伝えようとすると、うまくまとめられず時間がかかる。[2]
  • 行政の手続きや申請などで、書類の記入方法や説明を理解するのに苦労する。[12]
  • 話の文脈や相手の言葉の裏にある意図を読み取るのが苦手で、コミュニケーションで誤解が生じやすい。
  • 映画やドラマの字幕を読むのが精一杯で、映像と内容を同時に楽しむのが難しい。
  • 金融商品や投資などの説明を読んでも、仕組みやリスクがよくわからない。[12]

これらのサインは、あくまで「気づき」のきっかけです。「もしかして?」と感じたら、まずはその背景に何があるのかを冷静に考えることが第一歩となります。読書習慣の不足や一時的な疲れなど、他の要因が影響している場合も十分に考えられます。

重要なのは、困難を抱えている本人を責めたり、安易にレッテルを貼ったりするのではなく、その状態を理解し、必要に応じたサポートを考えることです。

5. 家庭でできること、自分でできること:読解力アップへのヒント

もし、自分自身やお子さんに機能的非識字の傾向が見られる、あるいは読解力をもっと高めたいと感じているなら、家庭や個人で取り組めることがいくつかあります。すぐに効果が出る特効薬はありませんが、日々の小さな積み重ねが、確かな力につながっていくはずです。

【子どもたちのために家庭でできること】

  1. 読書習慣を楽しく育む:
    • 読み聞かせをする: 幼い頃からの読み聞かせは、言葉への興味や物語を理解する力を育みます。年齢が上がっても、親子で同じ本を読んで感想を話し合うのも良いでしょう。
    • 一緒に図書館や本屋さんへ行く: 子どもが自分で本を選ぶ楽しさを体験させましょう。興味のある分野の本から始めるのがポイントです。
    • 読書環境を整える: 家の中に本が身近にある環境を作り、読書が特別なことではない雰囲気を作ることが大切です。
    • マンガや絵本も活用する: 最初は活字に慣れることが目的なので、子どもが楽しめるものからスタートしましょう。
  2. 音読を習慣にする:
    • 教科書や好きな本を声に出して読むことは、文字と意味を結びつける練習になります。間違えても叱らず、褒めながら進めるのがコツです。
    • 内容を理解しながら読めているか、時々質問してみるのも良いでしょう。
  3. 会話を豊かにする:
    • 日常の出来事やニュースについて、親子で積極的に会話しましょう。「なぜそう思うの?」「もし自分だったらどうする?」など、考えを深める質問を投げかけることで、語彙力だけでなく思考力や表現力も養われます。[5]
  4. 「なぜ?」「どうして?」を大切にする:
    • 子どもが疑問を持ったら、一緒に調べたり考えたりする時間を作りましょう。自分で情報を探し、理解しようとするプロセスが読解力を高めます。
    • 新聞やニュース記事を一緒に見て、内容について話し合うのも効果的です。
  5. 言葉遊びやゲームを取り入れる:
    • しりとり、なぞなぞ、クロスワードパズル、ボードゲームなど、言葉に触れる遊びは、楽しみながら語彙力や思考力を鍛えるのに役立ちます。
  6. 読みっぱなしにしない工夫:
    • 読んだ本の内容を絵に描いてみる、簡単なあらすじを話してもらう、感想を数行でも良いので書いてみるなど、アウトプットの機会を作ると理解が深まります。[1]
  7. 学校の先生と連携する:
    • 学校での学習状況について先生と情報交換し、家庭での取り組みについてアドバイスをもらうのも良いでしょう。

【自分で読解力を高めたい大人の方へ】

  1. 意識して文章を読む習慣をつける:
    • まずは興味のある分野の本や記事からで構いません。毎日少しずつでも、文章に触れる時間を作りましょう。
    • 新聞の社説やコラムなど、論理的な文章を読むのもおすすめです。
  2. わからない言葉はすぐに調べる:
    • スマートフォンや辞書を活用し、意味の曖昧な言葉をそのままにしない習慣をつけましょう。語彙が増えれば、文章理解の助けになります。
  3. 文章の構造を意識して読む:
    • 「この段落の要点は何か?」「筆者の主張は何か?」「その根拠はどこに書かれているか?」などを考えながら読むと、内容の理解が深まります。
    • 接続詞(しかし、だから、なぜなら等)に注目すると、文と文の関係性が把握しやすくなります。
  4. 要約する練習をする:
    • 読んだ記事や本の内容を、短い文章でまとめてみましょう。自分の言葉で言い換えることで、理解度を確認できます。
  5. 音読や朗読を試してみる:
    • 黙読で内容が頭に入りにくい場合は、声に出して読んでみるのも一つの方法です。集中力が高まり、理解を助けることがあります。
  6. 多様なジャンルの文章に触れる:
    • 小説、評論、実用書、ニュース記事など、さまざまな種類の文章を読むことで、多様な表現や論理展開に慣れることができます。
  7. 読書会や勉強会に参加する:
    • 同じ本を読んだ人と感想や意見を交換することで、自分一人では気づかなかった視点や解釈を発見でき、理解を深めることができます。

これらのヒントは、あくまで一例です。大切なのは、焦らず、楽しみながら、自分に合った方法で続けることです。「読めるけどわからない」から「読んでしっかりわかる」へ。その一歩を踏み出すことで、見える世界が広がるかもしれません。

読解力・国語力アップを目指す皆さんへ!おすすめ教材のご紹介

「機能的非識字」という言葉を知って、ドキッとした方、あるいは、お子さんの読解力や国語力について、もっと何かできることはないかと考えている親御さんもいらっしゃるかもしれません。

日々の読書習慣や会話ももちろん大切ですが、より効果的に、そして専門的なアプローチで読解力・国語力を鍛えたいという方のために、ここでは注目の教材をいくつかご紹介します。

  • 「速読解力講座」
    • 「読む速さ」と「内容理解の精度」をバランスよく鍛えることを目的とした講座です。[13][14]
    • 単に速く読むだけでなく、文章の要点を正確に捉え、情報を処理する能力を高めるトレーニングが特徴です。[14]
    • ゲーム感覚で楽しく取り組めるプログラムも用意されており、子どもから大人まで、無理なく続けやすいと評判です。[13][14] 受講者からは、「文章を読むのが楽になった」「テストの時間が余るようになった」といった声も聞かれます。[13][15]
    • 読書スピードと読解効率を上げたい受験生や、仕事で大量の文章を読む必要がある社会人の方にもおすすめです。
  • 「新国語講座」
    • 言葉の知識(語彙、文法)の習得から、論理的な思考力、表現力の育成まで、国語の総合力を高めることを目指す講座です。
    • 文章を正確に読み解くための基礎となる力を養い、筆者の意図や文章の構造を深く理解する訓練を行います。
    • 記述問題への対応力や、自分の考えを的確に表現する力も身につけることを重視しており、学校の成績アップはもちろん、将来にわたって役立つ本質的な国語力を育成します。
    • 国語の基礎を固めたい小学生、中学生や、小論文対策を考えている高校生にも適しています。
  • 「すらら国語」
    • 対話型のアニメーション教材で、キャラクターと一緒に楽しく国語を学べるのが大きな特徴です。
    • 一人ひとりの学習到達度に合わせて、AIが最適な問題を出題してくれるアダプティブラーニングを採用しており、無理なく自分のペースで学習を進められます。
    • 「読む・書く・聞く・話す」の4技能をバランスよく伸ばせるように設計されており、読解力だけでなく、コミュニケーション能力の向上も期待できます。
    • 学習習慣を身につけたいお子さんや、勉強に苦手意識があるお子さんでも、楽しく続けやすい工夫が満載です。

これらの教材は、それぞれに特徴があり、目指す目標や個々の学習スタイルに合わせて選ぶことができます。多くの場合、無料体験や資料請求などが可能ですので、まずは情報収集をして、ご自身やお子さんに合った教材を見つけてみてはいかがでしょうか。

読解力や国語力は、あらゆる学習の基礎となるだけでなく、豊かな人生を送るための大切なスキルです。これらの教材が、その力を伸ばすための一助となれば幸いです。

後半:

ここからは、「機能的非識字」について、より専門的な学術的背景、国内外の現状、関連要因の深掘り、そして具体的な対策や支援について掘り下げていきます。

6. 機能的非識字の学術的背景と定義

機能的非識字(Functional Illiteracy)という概念は、単に文字が読めるか読めないかという二元論的な識字(Literacy)の捉え方から、より実生活における読み書き能力の活用という側面を重視する形で登場しました。

識字概念の変遷

歴史的に見ると、「識字」の定義は時代や社会背景とともに変化してきました。かつては、自分の名前が書ける程度で識字者とみなされる時代もありました。[16] しかし、社会が複雑化し、情報化が進むにつれて、求められる読み書き能力の水準も高度化してきました。

ユネスコ(UNESCO)は、識字の定義を「日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解し、読み書きができること」としていますが[17][18]、これはあくまで基礎的な識字能力を指します。

機能的識字の登場

「機能的非識字」という言葉が注目されるようになった背景には、初歩的な読み書き能力の普及だけでは、貧困の克服や社会参加に十分つながらないという認識がありました。[16] 読み書き能力は、日常生活や社会生活の中で実際に必要とされる場面で機能して初めて意味を持つという考え方です。[16]

具体的には、1960年代頃から、ユネスコの識字政策が「機能的リテラシー(Functional Literacy)」を中心とするものへと方向転換したことが大きな契機とされています。[16] これは、読み書きの技術を教えるだけでなく、生活改善の訓練と結びつけて読み書きの役割を学ばせることが重要であるという認識に基づいています。[16]

機能的非識字の定義

機能的非識字とは、日常生活や社会生活を営む上で必要とされる水準の読み書き能力(読解力、記述力、計算能力などを含む広義のスキル)が不足しており、それによって社会参加や個人の目標達成に支障が生じている状態を指します。[1][2][3]

つまり、文字自体は読めても、その文章の意味を正確に理解し、情報を批判的に吟味し、それに基づいて適切な判断や行動をとることが難しい状態です。[3][9] これには、契約書や行政文書の理解、新聞記事の読解、医療情報の解釈、さらにはデジタル機器の操作説明の理解なども含まれます。[3][12]

重要なのは、機能的非識字は知能障害や学習障害(ディスレクシアなど)とは区別される概念であるという点です。[1][3] もちろん、これらの困難を併せ持つ場合もありますが、機能的非識字は、教育機会の不足や不適切な学習経験、社会環境の変化など、さまざまな要因によって生じうると考えられています。

日本においては、長らく「識字率ほぼ100%」とされてきたため、機能的非識字の問題はあまり顕在化してきませんでしたが、近年、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の結果などから、若者の読解力低下が指摘されるようになり[6][19][20]、この問題への関心が高まっています。

7. 機能的非識字の現状と課題

機能的非識字は、個人の問題に留まらず、社会全体にも影響を及ぼす深刻な課題です。ここでは、国内外の調査データや統計を交えながら、その現状と課題について見ていきます。

国際的な状況

  • PIAAC(国際成人力調査): OECDが実施しているPIAACは、成人(16~65歳)のスキル(読解力、数的思考力、ITスキルなど)を国際比較する調査です。この調査結果から、多くの先進国においても、日常生活や仕事で求められるレベルの読解力を十分に持たない成人が一定割合存在することが明らかになっています。例えば、アメリカでは成人人口の約21%が機能的非識字者であるという報告や[1]、成人人口の14%が文章リテラシー基礎未満であるといったデータもあります。[3] こうした人々は、複雑な情報を理解したり、複数の情報を比較検討したりすることに困難を抱えています。
  • 経済的損失: 機能的非識字は、個人の就労機会の制限や低賃金につながるだけでなく、社会全体の経済的損失も大きいと指摘されています。[1][21] 例えば、World Literacy Foundationは、機能的非識字を含む非識字による経済損失が世界で推定1兆1900億ドルにのぼるとの試算を出しています(2023年時点)。[8]

日本における現状

  • PISAショックと読解力低下: 日本では、2000年代初頭のPISA調査で読解力の順位が低下したことが「PISAショック」として教育界に衝撃を与えました。その後、読解力向上に向けた取り組みが進められましたが、2018年のPISA調査では再び読解力の順位が大きく低下し、日本の若者の読解力に対する懸念が再燃しました。[6][19][22] 特に、情報を取り出して理解する能力や、複数の情報源から得た情報の質や信憑性を評価し熟考する能力に課題が見られるとされています。[19]
  • 「教科書が読めない子どもたち」: 国立情報学研究所の新井紀子教授らが開発した「リーディングスキルテスト(RST)」の結果からは、多くの中高生が教科書レベルの文章を正確に読解できていない実態が明らかになり、社会に大きな衝撃を与えました。[10][11] これは、単に知識が不足しているのではなく、文章の構造や論理関係を把握する基本的な読解スキルが習得できていないことを示唆しています。
  • 機能的非識字者の割合(推定): 日本における機能的非識字者の正確な割合を示す公式な統計は少ないのが現状です。これは、長らく「識字率はほぼ100%」とされてきたことや[23][24]、機能的非識字の定義や測定方法が確立されていないことも影響しています。しかし、上記のPISAやRSTの結果、あるいは日常生活で説明書が読めない、契約内容が理解できないといった事例は、潜在的に多くの機能的非識字者が存在することを示唆しています。[9][25]

機能的非識字がもたらす課題

  • 教育格差の再生産: 家庭の社会経済的背景と子どもの読解力には関連があることが指摘されており[20]、機能的非識字が教育格差を固定化・拡大させる一因となる可能性があります。
  • 情報格差(デジタルデバイドとの関連): 情報化社会において、情報を読み解き活用する能力は不可欠です。機能的非識字は、必要な情報へのアクセスやその理解を妨げ、デジタルデバイド(情報格差)を深刻化させる恐れがあります。[12] 公的な情報や社会保障制度に関する情報が理解できなければ、適切な支援を受けることすら難しくなります。[8]
  • 社会参加の阻害と孤立: 複雑な社会の仕組みや制度、ニュースや時事問題の理解が困難な場合、主体的な社会参加や政治参加が難しくなり、社会からの孤立感を深めることにもつながりかねません。[1][2]
  • 労働生産性の低下と経済的影響: 労働力人口における機能的非識字者の増加は、労働生産性の低下や、企業における研修コストの増大などを通じて、経済全体にもマイナスの影響を与える可能性があります。[21]
  • 安全・健康リスクの増大: 災害時の避難情報、製品の安全に関する注意書き、医療情報などを正確に理解できないことは、生命や健康に関わるリスクを高めます。[1][2][12]

これらの課題は相互に関連し合っており、機能的非識字の問題への対策は、教育、福祉、労働など、社会の多岐にわたる分野での包括的な取り組みが求められることを示しています。

8. 機能的非識字と関連する要因

機能的非識字が生じる背景には、個人の認知特性から教育システム、社会環境の変化に至るまで、多様かつ複合的な要因が関わっています。ここでは、いくつかの側面からその要因を深掘りします。

認知心理学的な側面

  • ワーキングメモリの容量: ワーキングメモリは、情報を一時的に保持し処理するための認知システムです。文章を読む際には、単語の意味を記憶し、文の構造を解析し、それらを統合して全体の意味を理解するという複雑な処理が行われます。ワーキングメモリの容量が小さい、あるいは効率的に働かない場合、これらの処理が追いつかず、読解困難が生じる可能性があります。
  • 推論能力: 文章には、明示的に書かれていない情報(行間)を読み取る必要がある場面が多くあります。これを補うのが推論能力です。例えば、登場人物の感情や行動の理由、次に起こる出来事などを、文脈や自身の背景知識に基づいて推測する力が弱いと、表面的な理解に留まってしまいます。
  • 背景知識の役割: 文章を理解するためには、その内容に関連する背景知識が不可欠です。例えば、歴史に関する文章を読むためには、その時代の社会状況や主要な出来事に関する知識が必要です。背景知識が乏しいと、文章中の単語や事象が何を指しているのか、それらがどのように関連しているのかを理解することが難しくなります。
  • メタ認知能力: メタ認知とは、自身の認知活動(理解、記憶、思考など)を客観的に把握し、制御する能力です。「自分が文章の内容を理解できているか」「どこがわからないのか」「どうすれば理解できるか」といったことを自問自答し、読解方略を調整する力が弱いと、効果的な学習が妨げられます。

言語学的な側面

  • 語彙の質と量: 知っている単語の数(量)はもちろん重要ですが、それぞれの単語の意味を深く、多角的に理解しているか(質)も読解に影響します。文脈によって意味が変わる多義語や、抽象的な概念を表す語彙の理解が不十分だと、文章の正確な解釈が困難になります。
  • 統語理解(文法理解): 文の構造(主語・述語の関係、修飾関係、複文の構造など)を正確に把握する能力は、読解の基礎です。複雑な構文や長い修飾語句が含まれる文で混乱しやすい場合、統語理解に課題がある可能性があります。
  • 談話理解: 個々の文の意味がわかっても、それらが集まって構成される段落や文章全体の主題や論理展開を理解できなければ、読解は不十分です。文と文の結束性(cohesion)や文章全体の一貫性(coherence)を捉える能力が求められます。

教育システムの問題点

  • 詰め込み教育・暗記偏重の弊害: 知識の暗記に偏重し、文章の意味を深く考えたり、批判的に吟味したりする機会が少ない教育環境では、本質的な読解力が育ちにくいという指摘があります。[26]
  • 読解指導の不足・質の課題: 読解スキルを体系的に指導する方法論が確立されていなかったり、教員自身が読解指導の専門性を十分に持っていなかったりする場合、効果的な指導が行われない可能性があります。[7] 感覚的な指導ではなく、具体的な読解方略を教えることの重要性が指摘されています。[7]
  • 早期教育における「読み」偏重: 幼児期に文字を読むことだけに偏った指導が行われ、意味理解や内容について考える活動が疎かになると、表面的に文字を追うだけの読書習慣がついてしまう危険性があります。

社会環境の変化

  • 情報過多と受動的情報摂取の常態化: インターネットやSNSの普及により、日々膨大な情報に接するようになりました。しかし、その多くは短く断片的であったり、深く思考せずとも受動的に理解できる形式であったりすることが多く、長文を集中して読み解く訓練の機会が減少している可能性があります。[6][19]
  • コミュニケーション様式の変化: 短文でのやり取りが中心のコミュニケーション(例:チャット)に慣れることで、複雑な論理構成を持つ文章や、行間を読む必要のある文章に対する読解耐性が低下する可能性も指摘されています。[6][20]
  • 活字離れ・読書習慣の低下: 様々な娯楽や情報収集手段が登場したことで、相対的に読書に割く時間が減少し、読書量が低下している傾向が見られます。[5][20] 読書は語彙力、文脈理解力、想像力などを総合的に養う重要な機会であり、その減少は読解力低下の一因と考えられます。

発達障害との関連

  • ディスレクシア(発達性読み書き障害): 文字の読み書きに特異的な困難を持つ発達障害です。[1][27] 知的発達に遅れはないものの、音韻処理(文字と音を結びつける能力)や視覚情報処理の困難さから、文字を正確かつ流暢に読むことが難しい場合があります。[27] これにより、文章内容の理解にも影響が出ることがあります。機能的非識字とは原因が異なりますが、結果として読解困難を抱えるという点では共通の課題が生じます。[1]
  • ADHD(注意欠如・多動症): 不注意や多動性・衝動性の特性により、長文を読む際に集中力を維持することが難しかったり、細部を見落としてしまったりすることがあります。これも読解の正確性や効率性に影響を与える可能性があります。
  • ASD(自閉スペクトラム症): 言葉の文字通りの意味に捉われやすかったり、行間や文脈、相手の意図を読み取ることが苦手だったりする特性がある場合、文章の深い理解に困難が生じることがあります。

これらの要因は、単独で機能的非識字を引き起こすというよりも、相互に影響し合いながら、個人の読解プロファイルに影響を与えていると考えられます。したがって、支援にあたっては、多角的な視点から要因をアセスメントし、個別性の高いアプローチを検討することが重要です。

9. 機能的非識字への対策と支援

機能的非識字の問題に対応するためには、教育現場から家庭、地域社会、行政に至るまで、多層的かつ連携した取り組みが求められます。早期発見・早期支援の重要性とともに、成人に対する学習機会の提供も不可欠です。

教育現場での取り組み

  • 読解力育成を重視したカリキュラムと指導法:
    • PISA型読解力の育成: 単に情報を記憶するだけでなく、情報を探し出し、解釈し、評価・熟考する能力を育成する指導が求められます。[22] これには、複数のテキストを比較検討したり、情報の信憑性を吟味したりする活動が含まれます。[19]
    • アクティブラーニングの導入: 生徒が主体的に課題発見・解決に取り組む学習(PBL:Project Based Learning や探求学習など)を通じて、実践的な読解力や思考力を養います。
    • 具体的な読解ストラテジーの指導: 予測読み(次に何が書かれているか予測しながら読む)、質問生成(内容について自ら問いを立てる)、要約(重要な情報をまとめて自分の言葉で言い換える)、段落ごとの要点把握、キーワードの特定など、効果的な読解方略を明示的に指導します。
    • 語彙指導の充実: 文脈の中で語彙の意味を理解させたり、語彙マップを作成したりするなど、語彙の量と質を高める指導を系統的に行います。
  • 個別最適化された学習支援:
    • リーディングスキルテストなどを活用し、個々の生徒の読解スキルの状況を把握し、それぞれの課題に応じた指導や教材を提供します。
    • 学習に困難を抱える生徒に対しては、スモールステップでの指導や、視覚的な補助(図解、イラスト)、音声教材の活用など、多様なアプローチを検討します。
  • 教員の専門性向上:
    • 読解メカニズムや効果的な指導法に関する研修機会を充実させ、教員の指導力向上を図ります。
  • 学校図書館の活用と読書推進:
    • 魅力的な図書環境を整備し、生徒の読書意欲を高める取り組み(ブックトーク、読書週間など)を積極的に行います。

成人教育・リカレント教育の推進

  • 成人向けの識字・読解力向上プログラムの提供:
    • 夜間中学や地域の公民館、NPOなどが実施する識字教室や日本語教室、学び直しのための講座を拡充し、参加しやすい環境を整備します。[2]
    • 仕事や生活に直結する実践的な内容(契約書の読み方、公的書類の書き方、情報リテラシーなど)を取り入れることが重要です。
  • 職場における学習支援:
    • 企業が従業員のリスキリング・アップスキリングの一環として、読解力や情報活用能力向上のための研修機会を提供します。
    • マニュアルの分かりやすさ改善や、OJTを通じた丁寧な指導も重要です。
  • テクノロジーを活用した支援:
    • 読み上げソフト、文字サイズやフォントを変更できる電子書籍リーダー、AIを活用した文章要約ツールなど、テクノロジーを活用して読解のバリアを低減する工夫も有効です。

家庭・地域社会・行政の連携

  • 家庭における読書環境の重要性の啓発:
    • 保護者に対し、幼少期からの読み聞かせや家庭での読書習慣づくりの重要性を伝え、具体的な方法を情報提供します。
  • 地域リソースの活用:
    • 図書館や公民館が、地域住民向けの読書推進イベントや学習支援プログラムを企画・実施します。
    • 退職教員や学生ボランティアなど、地域の人材を活用した学習サポート体制を構築します。
  • 行政による支援体制の構築:
    • 機能的非識字の実態調査や課題分析を行い、科学的根拠に基づいた政策を立案・実施します。
    • 教育機関、福祉機関、労働機関など、関係機関の連携を促進し、切れ目のない支援体制を構築します。
    • 機能的非識字の問題に対する社会全体の理解を深めるための啓発活動を行います。[2]

早期発見・早期支援の重要性

  • 就学前や学齢期早期の段階で、言語発達や読み書きにつまずきが見られる子どもを早期に発見し、適切な支援につなげることが、その後の学習困難の深刻化を防ぐ上で極めて重要です。
  • 保育士、幼稚園教諭、小学校教員、保護者が連携し、子どもの様子を注意深く観察し、気になる点があれば専門機関(教育相談所、発達支援センター、医療機関など)に相談できる体制を整える必要があります。

機能的非識字への対策は、一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、社会全体でこの問題の重要性を認識し、長期的な視点で粘り強く取り組むことで、誰もが情報を読み解き、主体的に社会に参加できる共生社会の実現に近づくことができるはずです。

10. 機能的非識字研究の今後の展望

機能的非識字は、個人のウェルビーイングから社会全体の発展に至るまで、広範な影響を及ぼす喫緊の課題であり、その克服に向けた研究の深化が求められています。今後の研究においては、以下のような方向性が展望されます。

1. 評価方法の精密化と標準化

  • 多角的なアセスメントツールの開発: 現在、機能的非識字の程度や特性を正確に測定するための標準化された評価方法は十分に確立されていません。リーディングスキルテストのような試みはありますが、語彙力、統語理解、推論能力、背景知識の活用、メタ認知スキルなど、読解に関わる多様な側面を包括的かつ客観的に評価できるアセスメントツールの開発・改良が期待されます。これには、従来のペーパーテストに加え、ICTを活用したアダプティブな評価システムや、実際の生活場面を想定した課題遂行型の評価なども含まれるでしょう。
  • 早期スクリーニング手法の確立: 特に学齢期早期において、機能的非識字のリスクを抱える子どもを簡便かつ効果的にスクリーニングできる手法の開発は、予防的介入の観点から重要です。

2. 効果的な介入プログラムの開発とエビデンスの蓄積

  • 個別最適化された介入モデルの構築: 機能的非識字の要因や困難の現れ方は個人によって異なります。そのため、画一的なプログラムではなく、個々の認知特性や学習スタイル、年齢、生活環境に応じた、テーラーメイド型の介入モデルの開発が求められます。
  • エビデンスベースドアプローチの推進: 開発された介入プログラムの有効性について、質の高い実証研究(ランダム化比較試験など)を通じて科学的根拠を蓄積し、効果が実証されたプログラムを普及させていくことが重要です。これには、短期的な効果だけでなく、長期的な持続効果や実生活への般化効果の検証も含まれます。
  • テクノロジー活用の探求: AIを活用した個別学習支援システム、VR/ARを用いた没入型読解トレーニング、ゲーミフィケーションを取り入れた学習アプリなど、最新テクノロジーを効果的に活用した介入手法の開発も有望な領域です。

3. 神経科学的メカニズムの解明

  • 読解プロセスと脳機能の関連研究: fMRIやEEGなどの脳機能イメージング技術を用いて、健常者の読解プロセスや、機能的非識字者の脳における情報処理の特徴を解明する研究は、より効果的な介入方法の手がかりを与えてくれる可能性があります。ディスレクシア研究で進んでいるような、脳科学的知見に基づいた介入プログラムの開発も期待されます。
  • 発達的視点からの縦断研究: 幼少期から成人期に至るまでの読解スキル発達の軌跡と、それに関連する神経基盤の変化を長期的に追跡する研究は、機能的非識字の発生メカニズムや予防的介入の最適なタイミングを明らかにする上で有益です。

4. 社会的・環境的要因との相互作用の解明

  • 教育環境・家庭環境の影響分析: 学校における教育実践の内容や質、家庭の蔵書環境や保護者の読書習慣、社会経済的地位などが、子どもの読解スキル発達にどのように影響するのか、そのメカニズムをより詳細に解明する必要があります。
  • デジタル化社会における新たな課題の検討: SNSの普及やフェイクニュースの拡散など、デジタルメディア環境が読解行動や情報リテラシーに与える影響についての実証的な研究が求められます。これには、批判的思考力やメディアリテラシー育成のあり方も含まれます。

5. 分野横断的な学際的研究と政策提言

  • 教育学、心理学、言語学、脳科学、情報科学、社会学などの研究者が連携し、多角的な視点から機能的非識字の問題に取り組む学際的な研究体制の構築が不可欠です。
  • 研究によって得られた知見を基に、教育政策、労働政策、福祉政策などへの具体的な政策提言を行い、社会全体のシステム変革を促していくことが重要です。これには、機能的非識字の問題に対する社会的認知度の向上や、当事者へのスティグマ軽減に向けた啓発活動も含まれます。

AI技術がますます進化し、情報が氾濫する現代社会において、情報を正しく読み解き、批判的に吟味し、主体的に活用する能力としての「読解力」の重要性は、かつてなく高まっています。機能的非識字研究の進展は、この本質的な能力を全ての人々が獲得し、より豊かで公正な社会を実現するための鍵となるでしょう。

まとめ

この記事では、「機能的非識字」という、文字は読めるけれども文章の意味を十分に理解したり活用したりすることが難しい状態について、その意味、原因、影響、そして対策に至るまで、多角的に掘り下げてきました。

前半では、親御さんや学生さんにもわかりやすいように、具体的な例を交えながら、機能的非識字が私たちの身近に潜む問題であること、そして日常生活や学習、仕事にどのような困りごとをもたらすのかを説明しました。また、家庭や個人で読解力を高めるための具体的なヒントもご紹介しました。

後半では、より専門的な視点から、機能的非識字の学術的な背景、国内外の統計データから見える現状と課題、認知心理学や言語学、社会環境の変化といった多様な関連要因、そして教育現場や社会全体で取り組むべき具体的な対策や支援の方向性、さらには今後の研究展望について解説しました。

改めて強調したいのは、機能的非識字は決して他人事ではないということです。[4] 情報化が急速に進む現代社会において、文章を正確に読み解き、その情報を批判的に吟味し、適切に活用する能力は、私たちが社会生活を送り、自己実現を果たしていく上で不可欠なスキルです。

もし、ご自身やお子さん、あるいは周りの方が「読めるけどわからない」という困難を抱えていることに気づいたら、まずはその状態を理解し、責めることなく、適切なサポートを考えることが大切です。早期の気づきと適切な対応は、その後の学びや生活の質を大きく左右します。[1]

読解力を高めることは、単にテストの点数を上げることや、難しい本が読めるようになることだけが目的ではありません。それは、世界をより深く理解し、他者とより良くコミュニケーションを取り、自らの人生をより豊かにデザインしていくための力強い翼を手にすることなのです。

この記事が、機能的非識字という問題への理解を深め、読解力育成の重要性について改めて考えるきっかけとなり、そして、具体的な行動へと踏み出すための一助となれば幸いです。

Sources

  1. cococolor-earth.com
  2. note.com
  3. wikipedia.org
  4. abema.tv
  5. toyokeizai.net
  6. t-kyoikukai.org
  7. futurelabo.net
  8. abema.tv
  9. hakuraidou.com
  10. jukencoaching.com
  11. storyweb.jp
  12. jluggage.com
  13. sokunousokudoku.net
  14. tomigaoka-hs.jp
  15. sokunousokudoku.net
  16. kagoshima-u.ac.jp
  17. cococolor-earth.com
  18. spaceshipearth.jp
  19. robo-done.com
  20. nobinobikan.com
  21. readyfor.jp
  22. nii.ac.jp
  23. kotobaken.jp
  24. plan-international.jp
  25. scrapbox.io
  26. 3q-courage.co.jp
  27. sawaruglyph.com

いますぐお試しください!

過去問1000本ノック
4コマ無料体験のお申し込み/お問い合わせはこちら

※最適なご案内をするため、確認テスト・学診テスト・福井新聞模試の結果(最新1~2回分)もここにお書きください。
Thank you! Your submission has been received!
Oops! Something went wrong while submitting the form.

Related articles

Browse all articles