こんにちは。
オンライン授業のクエスタオンライン、
福井県坂井市春江町の学習塾クエスタ公式アシスタントの「わかるくん」です。
当塾では開業当初から「読解力」に着目し、
無学年式の専門講座を開講していますが、
先日、アベマTVに新井紀子先生がご出演され、
読解力とRSTに注目が集まっています。
アベプラ公式チャンネルより↓↓↓
ということで、今日のテーマは「機能的非識字」について。
早速内容の方入っていきましょう。
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「読書は好きですか?」「新聞や説明書を読むのに苦労した経験はありませんか?」
多くの方が、文字を読むこと自体はできるでしょう。しかし、「文字は追えるのに、書かれている内容が頭に入ってこない」「読んだはずなのに、何が言いたいのかわからない」…そんな経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。
実はこれ、「機能的非識字(きのうてきひしきじ)」と呼ばれる状態かもしれません。
この記事では、一見わかりにくい「機能的非識字」について、その意味や原因、私たちの生活に潜む影響、そして改善のためにできることを、前半では専門知識のない親御さんや学生さんにもわかりやすく、後半ではより専門的な視点も交えながら、詳しく解説していきます。
この記事を読んでわかること
「前半」はわかりやすく、「後半」では専門的な内容も含めてまとめました。
「自分には関係ない」と思っている方も、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
この問題は、子どもから大人まで、誰にでも関わる可能性のある、現代社会の隠れた課題なのです。
「機能的非識字」と聞いても、あまり馴染みのない言葉かもしれませんね。まずは、この言葉の意味を、身近な例を交えながら見ていきましょう。
「読める」と「わかる」は違う?
想像してみてください。
これらの経験は、もしかしたら機能的非識字のサインかもしれません。機能的非識字とは、文字を読むことはできるけれども、書かれている文章の意味を十分に理解したり、その情報を活用したりすることが難しい状態を指します。[1][2]
例えば、料理のレシピを見て、材料の名前や手順の文字は読めても、それぞれの工程が何を意味し、どうすれば美味しい料理が作れるのかを正確に把握できない状態を想像すると分かりやすいかもしれません。[2]
「非識字」や「ディスレクシア」とは違うの?
ここで、「非識字」や「ディスレクシア」といった言葉との違いを整理しておきましょう。
つまり、機能的非識字の人は、一見すると文字が読めているため、周囲からは困難が見過ごされやすく、本人でさえ自覚していないケースも少なくありません。[3][4]
「自分は大丈夫」と思っていませんか?
「自分は本も読めるし、テストの点も悪くないから大丈夫」と思っている人もいるかもしれません。しかし、機能的非識字は、学力や知能の高さとは必ずしも直結しません。普段の生活で少しでも「読みにくさ」「分かりにくさ」を感じているなら、それは他人事ではないかもしれません。この問題は、私たちの日常生活の質や、社会で生きていく力に深く関わっているのです。
では、なぜ文字が読めるのに内容が理解できない「機能的非識字」の状態になってしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
子どもたちの周りに潜む原因
大人にも関わる原因
大人になってから機能的非識字の困難に直面する、あるいは自覚するケースもあります。
これらの原因は、どれか一つだけが影響しているというよりは、複数組み合わさって機能的非識字の状態を引き起こしていることが多いと考えられます。大切なのは、自分や周りの人がどのような状況に置かれているかを客観的に見つめ、必要であれば対策を考えることです。
文字は読めるのに内容が理解できない「機能的非識字」の状態は、日常生活のさまざまな場面で困りごとや不利益につながる可能性があります。具体的にどのような影響があるのか見ていきましょう。
日常生活での困りごと
学習面での困りごと(特に学生さん)
仕事面での困りごと(特に社会人の方)
社会生活全体への影響
このように、機能的非識字は、個人の生活の質だけでなく、社会全体のあり方にも影響を及ぼす可能性のある、見過ごせない問題なのです。
「うちの子、もしかしたら…」「自分も当てはまるかもしれない…」と感じた方もいるかもしれません。ここでは、機能的非識字の可能性がある場合に現れやすいサインを、子ども向けと大人向けに分けていくつか挙げてみます。
ただし、これらはあくまで目安であり、いくつかのサインが当てはまるからといって、必ずしも機能的非識字であると断定できるわけではありません。気になる場合は、専門家(学校の先生、教育相談機関、医師など)に相談することが大切です。
子ども向けのサイン(例)
大人向けのサイン(例)
これらのサインは、あくまで「気づき」のきっかけです。「もしかして?」と感じたら、まずはその背景に何があるのかを冷静に考えることが第一歩となります。読書習慣の不足や一時的な疲れなど、他の要因が影響している場合も十分に考えられます。
重要なのは、困難を抱えている本人を責めたり、安易にレッテルを貼ったりするのではなく、その状態を理解し、必要に応じたサポートを考えることです。
もし、自分自身やお子さんに機能的非識字の傾向が見られる、あるいは読解力をもっと高めたいと感じているなら、家庭や個人で取り組めることがいくつかあります。すぐに効果が出る特効薬はありませんが、日々の小さな積み重ねが、確かな力につながっていくはずです。
【子どもたちのために家庭でできること】
【自分で読解力を高めたい大人の方へ】
これらのヒントは、あくまで一例です。大切なのは、焦らず、楽しみながら、自分に合った方法で続けることです。「読めるけどわからない」から「読んでしっかりわかる」へ。その一歩を踏み出すことで、見える世界が広がるかもしれません。
「機能的非識字」という言葉を知って、ドキッとした方、あるいは、お子さんの読解力や国語力について、もっと何かできることはないかと考えている親御さんもいらっしゃるかもしれません。
日々の読書習慣や会話ももちろん大切ですが、より効果的に、そして専門的なアプローチで読解力・国語力を鍛えたいという方のために、ここでは注目の教材をいくつかご紹介します。
これらの教材は、それぞれに特徴があり、目指す目標や個々の学習スタイルに合わせて選ぶことができます。多くの場合、無料体験や資料請求などが可能ですので、まずは情報収集をして、ご自身やお子さんに合った教材を見つけてみてはいかがでしょうか。
読解力や国語力は、あらゆる学習の基礎となるだけでなく、豊かな人生を送るための大切なスキルです。これらの教材が、その力を伸ばすための一助となれば幸いです。
ここからは、「機能的非識字」について、より専門的な学術的背景、国内外の現状、関連要因の深掘り、そして具体的な対策や支援について掘り下げていきます。
機能的非識字(Functional Illiteracy)という概念は、単に文字が読めるか読めないかという二元論的な識字(Literacy)の捉え方から、より実生活における読み書き能力の活用という側面を重視する形で登場しました。
識字概念の変遷
歴史的に見ると、「識字」の定義は時代や社会背景とともに変化してきました。かつては、自分の名前が書ける程度で識字者とみなされる時代もありました。[16] しかし、社会が複雑化し、情報化が進むにつれて、求められる読み書き能力の水準も高度化してきました。
ユネスコ(UNESCO)は、識字の定義を「日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解し、読み書きができること」としていますが[17][18]、これはあくまで基礎的な識字能力を指します。
機能的識字の登場
「機能的非識字」という言葉が注目されるようになった背景には、初歩的な読み書き能力の普及だけでは、貧困の克服や社会参加に十分つながらないという認識がありました。[16] 読み書き能力は、日常生活や社会生活の中で実際に必要とされる場面で機能して初めて意味を持つという考え方です。[16]
具体的には、1960年代頃から、ユネスコの識字政策が「機能的リテラシー(Functional Literacy)」を中心とするものへと方向転換したことが大きな契機とされています。[16] これは、読み書きの技術を教えるだけでなく、生活改善の訓練と結びつけて読み書きの役割を学ばせることが重要であるという認識に基づいています。[16]
機能的非識字の定義
機能的非識字とは、日常生活や社会生活を営む上で必要とされる水準の読み書き能力(読解力、記述力、計算能力などを含む広義のスキル)が不足しており、それによって社会参加や個人の目標達成に支障が生じている状態を指します。[1][2][3]
つまり、文字自体は読めても、その文章の意味を正確に理解し、情報を批判的に吟味し、それに基づいて適切な判断や行動をとることが難しい状態です。[3][9] これには、契約書や行政文書の理解、新聞記事の読解、医療情報の解釈、さらにはデジタル機器の操作説明の理解なども含まれます。[3][12]
重要なのは、機能的非識字は知能障害や学習障害(ディスレクシアなど)とは区別される概念であるという点です。[1][3] もちろん、これらの困難を併せ持つ場合もありますが、機能的非識字は、教育機会の不足や不適切な学習経験、社会環境の変化など、さまざまな要因によって生じうると考えられています。
日本においては、長らく「識字率ほぼ100%」とされてきたため、機能的非識字の問題はあまり顕在化してきませんでしたが、近年、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の結果などから、若者の読解力低下が指摘されるようになり[6][19][20]、この問題への関心が高まっています。
機能的非識字は、個人の問題に留まらず、社会全体にも影響を及ぼす深刻な課題です。ここでは、国内外の調査データや統計を交えながら、その現状と課題について見ていきます。
国際的な状況
日本における現状
機能的非識字がもたらす課題
これらの課題は相互に関連し合っており、機能的非識字の問題への対策は、教育、福祉、労働など、社会の多岐にわたる分野での包括的な取り組みが求められることを示しています。
機能的非識字が生じる背景には、個人の認知特性から教育システム、社会環境の変化に至るまで、多様かつ複合的な要因が関わっています。ここでは、いくつかの側面からその要因を深掘りします。
認知心理学的な側面
言語学的な側面
教育システムの問題点
社会環境の変化
発達障害との関連
これらの要因は、単独で機能的非識字を引き起こすというよりも、相互に影響し合いながら、個人の読解プロファイルに影響を与えていると考えられます。したがって、支援にあたっては、多角的な視点から要因をアセスメントし、個別性の高いアプローチを検討することが重要です。
機能的非識字の問題に対応するためには、教育現場から家庭、地域社会、行政に至るまで、多層的かつ連携した取り組みが求められます。早期発見・早期支援の重要性とともに、成人に対する学習機会の提供も不可欠です。
教育現場での取り組み
成人教育・リカレント教育の推進
家庭・地域社会・行政の連携
早期発見・早期支援の重要性
機能的非識字への対策は、一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、社会全体でこの問題の重要性を認識し、長期的な視点で粘り強く取り組むことで、誰もが情報を読み解き、主体的に社会に参加できる共生社会の実現に近づくことができるはずです。
機能的非識字は、個人のウェルビーイングから社会全体の発展に至るまで、広範な影響を及ぼす喫緊の課題であり、その克服に向けた研究の深化が求められています。今後の研究においては、以下のような方向性が展望されます。
1. 評価方法の精密化と標準化
2. 効果的な介入プログラムの開発とエビデンスの蓄積
3. 神経科学的メカニズムの解明
4. 社会的・環境的要因との相互作用の解明
5. 分野横断的な学際的研究と政策提言
AI技術がますます進化し、情報が氾濫する現代社会において、情報を正しく読み解き、批判的に吟味し、主体的に活用する能力としての「読解力」の重要性は、かつてなく高まっています。機能的非識字研究の進展は、この本質的な能力を全ての人々が獲得し、より豊かで公正な社会を実現するための鍵となるでしょう。
この記事では、「機能的非識字」という、文字は読めるけれども文章の意味を十分に理解したり活用したりすることが難しい状態について、その意味、原因、影響、そして対策に至るまで、多角的に掘り下げてきました。
前半では、親御さんや学生さんにもわかりやすいように、具体的な例を交えながら、機能的非識字が私たちの身近に潜む問題であること、そして日常生活や学習、仕事にどのような困りごとをもたらすのかを説明しました。また、家庭や個人で読解力を高めるための具体的なヒントもご紹介しました。
後半では、より専門的な視点から、機能的非識字の学術的な背景、国内外の統計データから見える現状と課題、認知心理学や言語学、社会環境の変化といった多様な関連要因、そして教育現場や社会全体で取り組むべき具体的な対策や支援の方向性、さらには今後の研究展望について解説しました。
改めて強調したいのは、機能的非識字は決して他人事ではないということです。[4] 情報化が急速に進む現代社会において、文章を正確に読み解き、その情報を批判的に吟味し、適切に活用する能力は、私たちが社会生活を送り、自己実現を果たしていく上で不可欠なスキルです。
もし、ご自身やお子さん、あるいは周りの方が「読めるけどわからない」という困難を抱えていることに気づいたら、まずはその状態を理解し、責めることなく、適切なサポートを考えることが大切です。早期の気づきと適切な対応は、その後の学びや生活の質を大きく左右します。[1]
読解力を高めることは、単にテストの点数を上げることや、難しい本が読めるようになることだけが目的ではありません。それは、世界をより深く理解し、他者とより良くコミュニケーションを取り、自らの人生をより豊かにデザインしていくための力強い翼を手にすることなのです。
この記事が、機能的非識字という問題への理解を深め、読解力育成の重要性について改めて考えるきっかけとなり、そして、具体的な行動へと踏み出すための一助となれば幸いです。
Sources