こんにちは。
オンライン授業のクエスタオンライン、
福井県坂井市春江町の学習塾クエスタ塾長の大村です。
今回はRST(リーディングスキルテスト)では特に正解率が低い問題として有名な、
「アミラーゼ問題」について。
------------20255/22追記-----------
当塾では開業当初から「読解力」に着目し、
無学年式の専門講座を開講していますが、
先日、アベマTVに新井紀子先生がご出演され、
読解力とRSTに注目が集まっています。
アベプラ公式チャンネルより↓↓↓
この番組でも「アレクサンドラ構文」と共に「アミラーゼ構文」が取り上げられ、
かなり話題になっているようです。
私としては「アミラーゼ構文」という言い方が、
詭弁の手法として言及されている「石丸構文」「進次郎構文」
と同列に扱われている感じがして、すごくイヤです。
「アミラーゼ構文」とこの問題は詭弁でもなんでもなく、
(合理的範囲で)正確に書かれた教科書の文と論理的に成立した問題です。
ただ、やっぱりアクセス数は伸ばしたいので😅この用語をあえて使うことにします。
-------------------------------------
目次:
1.「アミラーゼ」の問題
2.化学や生物の知識がなくても解ける問題か検証してみた
3.出典は教科書の文;この文が読めない≒教科書が読めない
4.入試でも良く出る「読めばわかる」問題;その出題理由は?
5.ご家庭で簡単にできるトレーニング方法
6.読解力アップにお勧めの教材
7.おまけ:恥ずかしげもなく繰り返されるこの問題に対する大人たちからの批判への回答
8.おまけ:「アミラーゼ構文」は悪文か
いきなりですが、まずは問題から見ていきましょう。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
セルロースは( )と形が違う。
(1) デンプン (2) アミラーゼ (3) グルコース (4) 酵素
※新井紀子著『AIvs.教科書が読めない子どもたち』より
デンプン
最初に提示された文の「形が違うセルロースは分解できない」の部分には
「何と」という情報が欠けていますが、
これがわかれば( )内を埋めることができるはずです。
この時点で(?)と思っている方は同義文判定の能力に問題があります。
「何と」という情報は直接は書いてありませんが、
すでに出てきている情報のためその場所では省略されています。
「セルロースは○○と形が違う。」は
「(〇〇と)形が違うセルロースは分解できない。」から
「(〇〇と)形が違うセルロース」の部分を取り出した同義文であり、
この省略されている〇〇は何かを考えるのがこの問題です。
ヒントになるのはその直前にある
「同じグルコースからできていても」
という部分です。
ここでも何と「同じ」なのかが書かれていませんが
ここもセルロースと〇〇の比較が書かれており、
同じように「○○と」が省略されていることがわかるので、
ここから考えてもいいわけです。
ここまでのことを一旦まとめます。
・元の文の省略されている部分をわかりやすくすると、
「アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、(〇〇と)同じグルコースからできていても、(〇〇と)形が違うセルロースは分解できない。」
・(〇〇と)が共通の太字部分から考える
ここで、「グルコースからできて」とありますが、
その直前までの文でグルコースからできていると言及されているのは
「デンプン」以外にありませんので、
〇〇に入るのは「デンプン」に決まる。
よって正解は「デンプン」以外に考えられないということになります。
もちろん、このような文が正しく読める人(読解力のある人)でも、
いちいちこんなことを考えて読んでいるわけではありません。
文章の構造の認識、文脈による補填を自然流れで認識できるのが、
「読解力がある」という状態です。
しかし、これを生活の中で身につけてこなかった人に対しては
1個1個理屈で説明して、それを繰り返すうちに慣れてもらうしかありません。
--------------2025/5/20追記----------------
これだけ説明しても、化学的説明としての厳密さにこだわったり、
知識がないと解けないと言い張る人がいるので、
化学や生物に無関係な問題を2つ試作してみました。
まず1つ目は名付けて「ポン・デ・リング構文」
タロウという人間は小麦玉がつながってできたポン・デ・リングが大好きだが、
同じ小麦玉からできていても、形が違うフレンチクルーラーは好きではない。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
フレンチクルーラーは( )と形が違う。
(1)ポン・デ・リング
(2)タロウ
(3)小麦玉
(4)人間
ここまで来て用語の説明としての完全さが求められるようなものではないことが理解できず、
「フレンチクルーラーはタロウとも形が違うだろ!」
「答えは小麦玉だ!」
と言う人がいたら、お話になりません。
もう日本語が少しも通じないというレベルなので放っておきます。
ただ、この問題だとポン・デ・リングとフレンチクルーラーがドーナツの一種で、
共に小麦からできているという予備知識があるから答えられているのではないかという
疑義が生じます。
そこで、2つ目は完全に虚構のナゾ言葉を使用して作ってみました。
いい感じに虚構用語が思いつかない、というか恥ずかしいので、
虚構用語はAIに作ってもらいました。
もし、これで正解可能であれば、
知識が無いと正解できないという主張は完全に崩れます。
その問題がこちらです。
イグナスというネブルは、ホワホワが集まってできたフムフムをボロボロにするが、
同じホワホワからできていても、形が違うグヌグヌはボロボロにできない。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
グヌグヌは( )と形が違う。
(1) イグナス
(2) フムフム
(3) ネブル
(4) ホワホワ
正解は・・・
↓
↓
↓
↓
↓
(2) フムフム
(わざと順番はシャッフルしました。)
いかがでしょうか?
意味の無い言葉が使われている分、
読みにくさは倍増していますが、
それでもやはり正解にたどり着くことはできます。
この正解を導き出す理屈は「アミラーゼ構文」と基本的に変わりませんが、
うるさいオジサンたちを黙らせるために、
もう一度さらに詳しくこの問題に即した解説を試みます。
まず、この文の骨組みの部分を取り出します。
「イグナスは、フムフムをボロボロにするが、グヌグヌはボロボロにできない。」
これで
①イグナスはフムフムをボロボロにする
しかし(が)
②イグナスはグヌグヌをボロボロにできない
という論理構造が明らかになりました。
残りの部分は、
同じように見えるにも関わらず(同じホワホワからできていても)
「ボロボロにする」と「ボロボロにできない」という結果の差異が生じる理由(形が違う)を説明しています。
何と何を比較して「同じ」「違う」と言っているかといえば、
「イグナスは、フムフムをボロボロにするが、グヌグヌはボロボロにできない。」
ことの説明なので、「フムフムとグヌグヌ」以外にはありえません。―1️⃣
また、接続助詞「ても」は前半部分(接続部)の条件が成立したとき、
後半部分(述部)の結果が生じそうなのに生じないという「逆説の確定条件」を提示する働きがあるので、
「同じホワホワからできてい」ることが条件部分で、
「形が違うグヌグヌはボロボロにできない」が結果部分であるということになり、
「 "同じホワホワからできていても、形が違う"で切れ、"イグナス(というネブル)は" が "形が違う" にかかっている。 」とか
「 "ホワホワが" が "形が違う" にかかっている。 」
という解釈は成り立ちません。
読点の位置が「ても」の直後に来ていることもその傍証です。
だから、「形が違う」が主部「イグナス(というネブル)は」または「ホワホワが」に対しての述部という解釈は成り立たず、
「形が違う」は「グヌグヌ」にかかる連体修飾語であると確定します。―2️⃣
1️⃣・2️⃣により、「(フムフムと)形が違うグヌグヌ」としか読めず、
答えは(2)「フムフム」と一意に定まります。
---------------------------------------------
「アミラーゼ」の問題は基礎的読解力のうち「照応解決」を測る問題の中では比較的難しい問題とされていて、
日本語では頻繁に発生する「ゼロ照応」が正しく解決できるかをみる問題です。
大人でも高確率で間違える問題です。
公立中学校の中学生の正解率はなんとわずか9%、高校生でも30%しかありません。
あてずっぽうでも25%ですから、これがどんなに低いかお判りでしょう。
私の経験でも、公立中で成績上位15%以内の子にやらせても、
正解する子はほとんどいませんでした。
しかし実はこの文章、出典は高校の生物基礎の教科書(東京書籍「新編・生物基礎」)です。
つまり、「本来高校受験生や高校生はこのくらいなら読めて当たり前」という前提で
教科書や試験問題は作られているのです。
実際の学校の定期試験や入試問題でも、このように知識が無くても解ける問題というのは実は結構あります。
もちろん入試問題ともなれば、更に知識の完成された状態を前提にした文になるので、
もう少し専門的かつ隙の小さいものになると思います。
わざと受験生の誰もわからないような難しい言葉を使って、
「読めばわかる問題」を出してきたりもします。
入試をやる側からすると、講義を聞けば正しく理解できるような、
「勉強すればいくらでも伸びる」生徒に入ってきて欲しい
(日本語が理解できないような「伸びしろの小さい」生徒はできればご免こうむりたい)
と思っているからです。
難しい学校になると、受験生皆が勉強しているような知識問題だけでは点差が開きにくく、
そのような問題ばかりではうまく選抜できないという事情もあります。
裏を返せば、どんなに難しい言葉を使った文章にも対応できる読解力を身に着けていれば難関校で勝負できるということです。
文章を読むというのは、何か知識を教えただけですぐにできるようなものではないので、
こうすればすぐに「照応解決」ができるようになるという方法はありません。
地道に鍛えていくしかないのです。
ですが、時間はかかっても簡単にできるトレーニング方法があります。
お子様が何かを話すときに、文要素や修飾語が抜けていることは多々あるかと思いますが、
そのときにツッコミを入れる方法です。
主語が抜けているときは「何が?」「誰が?」、
必要な修飾語が抜けているときは「どこで?」「何に?」「何の?」「どんなふうに?」など
いちいちツッコミを入れるのです。
これにより、「文要素や必要な修飾語が抜けていると気持ち悪い」という感覚を持たせます。
そのような感覚が身についてくると、文章を読むときや人の話を聞く時も、
文要素や修飾語の存在を常に意識して読んだり、聞いたりするようになります。
時間的には何年もかかると思いますが、かなり効果的な方法です。
「短期間で鍛えたい!」「集中的に鍛えたい!」「そんなことしていたら親子関係が・・・」という方は、
以下もご覧ください。
基礎読解力というものは頭で理解するだけで身につくものではありません。文章を論理的に読む訓練が必要です。
よくある勘違いですが、市販の国語の問題集で長文読解をやみくもにやっても、基礎読解力は身につきません。
基礎読解力が無い方は短文を正確に読めないのですから、長い文章にやみくもに当たっても効果が出ないのは当然です。
この新国語講座では基礎読解力を6つのカテゴリに分けて、それぞれのカテゴリにフォーカスした問題を使って訓練することができます。
この新国語講座は論理的に正確に読むという点にフォーカスが当たっています。
じっくり時間をかけても正確に読めないという生徒さんにお勧めの教材です。
学習塾専用教材となっており、全国のお近くの学習塾で受講可能です。
近くの塾がリストに無い、塾ではなくオンラインで受講したいという方は、
クエスタ・オンラインで5500円~で受講できます。
速読解力講座やすららとセットでお得に受講できるメニューもあります。
試験で成績を残すためには、「正確に読める」だけでは足りません。
試験には制限時間があり、その時間内で「速く正確に」読める必要があります。
学校の授業でも先生の板書や説明のスピードに追い付く必要があります。
せっかく文章を正しく理解する力があっても、スピードが追いつかないのなら「読めない」のと大差ありません。
高校入試も大学入試も近年語数が著しく増加しており、「速く読む」ことも含めて必須のスキルになりつつあります。
「速読解力講座」は認知能力や情報処理スピードにフォーカスが当たっており、
「速く読む能力」を身に着けるためのたくさんの種類のトレーニングを行うことができます。
情報処理が遅い生徒さんや、いつも試験で時間が足りなくなってしまう生徒さんにお勧めです。
学習塾専用教材となっており、全国のお近くの学習塾で受講可能です。
近くの塾がリストに無い、塾ではなくオンラインで受講したいという方は、
クエスタ・オンラインで5500円~で受講できます。
新国語講座やすららとセットでお得に受講できるメニューもあります。
すららは読解力特化の教材ではありませんが、
実はこのすららの「国語」が基礎読解力の養成に大変効果的な内容と構成になっています。
いきなり長文から始まるような国語教材には基礎読解力を上げるには向いていないというお話をしましたが、
このすららは1文を正確に読むためのスキルを身に着けるところから始まり、
2~3文程度の長さの文、中くらいの文、よくある国語問題集の長文くらいの文、
入試レベルの長文という形で順を追ってステップアップしていく構成になっています。
そして1文の読解や2~3文・中くらいの長さの文の読解のフェーズでは、
この問題でも取り上げた照応解決、係り受け、推論、具体例同定など
基礎読解力6分野のうち5分野を丁寧にカバーしていて、まさに基礎読解力養成に適した内容になっています。
すらら国語でカバーされていないのは基礎読解力6要素のうち「イメージ同定」のみですが、
こちらは算数(数学)・理科・社会でカバーすることができます。
しかもこのすらら、受講者はもれなく無料のコーチングサービスを受けることができます。
生徒さんの実力や学習段階に合わせた目標を、学習塾経営者がたててくれ、進捗管理までしてくれます。
確かな読解力が身につくまで二人三脚で伴走してくれるというわけです。
私も現役のすららコーチとして活動していますが、その際、理解力に課題がある生徒にはまずこの国語を勧めています。
この教材を順を追ってやっていけば読解力が上がり、勉強全体が進めやすくなるという確信があるからです。
すららの国語は
・トレーニングだけでなく、説明もじっくり聞きたいという生徒さん
・基礎読解力を長文につなげたい生徒さん
・進捗管理や学習計画までみてほしい生徒さん
など幅広い層にお勧めできます。
このすららもクエスタ・オンラインで3~4教科8,800円・5教科1,1000円で受講することができます。
値段はすららネットで直接受講するのと変わりませんが、リュケイオンオンラインでは質問ができたり、
他の講座の割引が受けられたりといった他にはない特典があります。
以下はちょっとした愚痴です。かなり怒っていますので、お嫌いな方は読まないでください。
この問題はRSTという読解力を測るための試験の「照応解決」カテゴリの例題ですが、
教科書の監修や教科書検定を通じて何度も専門家のチェックを受けている文であるにも関わらず、
この問題を取り上げると、やれ「この文章は悪文だ」とか、
外からの知識を持ち込んで「科学的に正確ではない」「言葉足らずだ」とか、
「解答がひとつに絞れない」とかいう非難をするオトナがちょいちょい出てきますが、
そういう方は問題文や出題の意図を正しく読めなていない、
読解力の無い人です。
理由は以下の通りです。
悪文である→
「良し悪し」は主観的な評価でしかないし、
世の中のすべての人が良文であると認める文章など存在しない。
誰かが悪文と感じる文章であっても、
正しく読んだときに解釈が定まる文章であるなら、文章として正しいし、
仮に意味にあいまいさが残ったとしても、
正しく読んだときに解答が定まる問題なら、
少なくとも読み方の問題としては成立する。
読みにくい文章だから読み方の問題として取り上げているのに、
読みにくいという批判は問題の意図を理解していないとしか言いようがない。
科学的に・・・→
「この文脈において」と書いてあるの見えていますか?
文章というのはふつう、
ボリューム、使用される場面・目的・読み手の知識など、
一定の制約がある中で作られるものです。
抽象概念には、文脈やシーンによって意味や定義が変わってくるものもあります。
例えば、「平行線の数」はユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学で変わってきます。
しかし、「ユークリッド幾何学の公理系のもとで」なんていちいち断りますか?
断らないでしょう。
中学校や高校の問題であれば、その範囲で習った「平行線の数」の意味だということは断りが無くても誰にでもわかります。
これが出題意図という一種の文脈情報です。
平行線の例を挙げるまでもなく、全ての概念と知識を完全に疑念の余地なく網羅し、
なおかつ制約に従った文章を作成することなど土台不可能です。
突き詰めるにしても、限度というものがあります。
「われ思うゆえにわれあり」まで遡れとでもいうのでしょうか。
※この文章に穴が無いと言っているのではなく、文脈に依存しない穴の無い文章を作ることなどそもそもできないと言っています。
解答がひとつに絞れない→
上記で説明したように、この文脈では省略された「〇〇と」にあてはまるのは「デンプンと」以外に考えられません。
この文脈において他につじつまの合う読み方があるならぜひ教えていただきたい。
-----------------------2025/5/21追記-------------------------
このアミラーゼ構文のことを、「悪文」と言う方が多いようですが、その評価は妥当でしょうか。
このアミラーゼ構文を悪文だと言っておられる方の多くは、
①科学的な厳密さが無い
②分けて書くべきところを無理に一文にしているために読みにくい文章になっている
というようなことを言っておられます。
まずは①について。
まず、グルコースやアミラーゼとも形が違うではないかという指摘について。
もうこれは論外です。
ここまで読んでまだ理解できないならもうアホです。
ほっときます。
しかし、そんな馬鹿げた指摘以外にも、
デンプンがα-グルコースで、
セルロースはβ-グルコースだから、
「厳密に言うと同じグルコースでない」というものがあります。
なるほど、確かにこれは一理ありそうです。
しかし、考えてもみてください。
ここでグルコースのα体とβ体を区別する必要があるでしょうか。
文章にはその文章を書く目的や文章が使用される状況という制約があります。
この文章の場合は、化学の知識に乏しく、酵素という用語を習いたての、
中学生に毛が生えたくらいの高校1年生に、
酵素の基質特異性を実例を以て説明することが目的で書かれたものです。
しかもグルコースのα体とβ体はグルコースが水溶液中で
平衡状態で存在する(構造が絶えず揺れている)というもので、
やっぱり同じグルコースであることには変わりありません。
この場面でαとβを区別することに何の意味があるでしょうか。
α・βと言われて高校一年生が補足なく理解できるでしょうか。
酵素は分解できる物質の構造が決まっており、
同じ構成要素からできているにも関わらず、
全体として違う構造を持っているために
分解できないということをうまく伝えられるでしょうか。
ここでyesという人もやっぱりアホです。
そういう人は自然数までしか習っていない小学生に、
無理数だの虚数だのととうとうと語ってあげればいいと思います。
「この文だけを取り出して考えた場合(現実離れした想定です)
に厳密さを欠くように思える」が正解です。
ここから「悪文である」という結論を導くのが妥当だとは私は思いません。
②について。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、
同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
この文章を分けて書いてみます。
なお、「デンプンと」を補えば理解しやすくなるという特徴は「アミラーゼ構文」も同じなので、それは禁じ手とします。
まず、この文章の骨格部分は「アミラーゼという酵素はデンプンを分解するがセルロースは分解できない」です。
この部分を取り出す形で書き直してみましょう。
デンプンはグルコースでできている。
セルロースも同じグルコースでできている。
アミラーゼという酵素はデンプンを分解するがセルロースは分解できない。
なぜならセルロースは形が違うからだ。
確かに、1つ1つはわかりやすくなった感じです。
しかし、この文の相互のつながりという意味ではかえってわかりにくくなっています。
同じグルコースでできているから分解できそうなものだが、実際には形が違うという理由で分解できない
という文意が表現できていません。
これを伝えようと思うと1文以上追加する必要が生じます。
また、「形が違う」に「デンプンと」を補わなければならない点は変わっていません。
次に、接続助詞「が」を境に2文に分けてみます。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解する。
しかし、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
これで何かが変わったでしょうか?
読み取らなければならない内容は特に変わってません。
そこで更に、読み間違いの原因にもなっている「形が違う」を切り離してみます。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解する。
しかし、同じグルコースからできているのに、セルロースは分解できない。
なぜなら、セルロースは形が違うからだ。
なるほど、確かに「形が違う」と「セルロース」の関係を読み誤る可能性は潰せた感じです。
読みやすくなったと言ってもよいでしょう。
しかし、この文章の本来の目的、
「酵素は同じような物質であっても形が異なれば働かない」という内容を伝える
という目的は余計に果たしにくくなっているようにも思えます。
主題は本来酵素ですが、この書き方だとセルロースにスポットライトがあたってしまいます。
これをセルロースではなく酵素の説明だと捉える人が果たしてどれくらいいるでしょうか。
いかがでしょうか。
あなたはこの「アミラーゼ構文」が悪文だと思いますか?
私は、
「同じシュチュエーション・同じニュアンスで
これより良い書き方がもしかすると世の中にはあるかもしれないが、
悪文と言うには理由がなさすぎる」と思います。
もしなたが「同じシュチュエーション・同じニュアンスでこれより良い書き方できる」のであれば、
それはきっとあなたの稀有な文才によるものでしょう。
アミラーゼ構文が悪文なのではありません。
-----------------------------------------------------------